#10『マルサの女』ミニッツライナー(127分)

ミニッツライナーとは?
映画本編ごとに止めて
「だれが」「なにをした」
かだけをずつ書いていくことで  
映画の構造をより深くたのしむ方法です
_SL1000_






こんにちは
今回は伊丹十三の代表作
マルサの女』をミニッツライナーします

和製チャイナタウン。
第11回日本アカデミー賞では最優秀作品/監督/脚本/主演男優/主演女優/助演男優/音楽/録音/編集賞。主要9部門を受賞




目次

【前半】
『マルサの女』ミニッツライナー(127分)
読めばいつでも映画を思い出せるように「だれが」「なにをした」だけで難しくならないように書きました

【後半】
まとめ&15分解説W
邦画の教科書   ×『続・チャイナタウン』
今回は特別に2つの解説を同時にお送りします
①邦画の教科書
 今度は15分おきに映画を見つめなおすことで教科書のように映画が読める解説です
②『続・チャイナタウン』
 実は、映画『チャイナタウン』の続編として読むことで、分かりやすくるんじゃないか?
マルサの女を変わった切り口で楽しめる解説です





それではどうぞ

1987年公開『マルサの女』 上映時間127分
A Taxing Woman
監督 伊丹十三
脚本 伊丹十三

※数字は上映時間の分です

1.権藤、袴田の病院を訪ねる
2.権藤、実印と印鑑証明を受け取る

3.権藤、袴田不動産を設立
4.権藤、サラ金一家を立ち退かせる
5.権藤、菊地からマンションを頂く
6.権藤、売上7億を袴田不動産へ入金するよう指示
7.権藤、漆原議員から株の情報を得る
8.蜷川、身内に脱税の罪を肩代わりさせる
9.権藤、蜷川から5000万借りたことにする
10.権藤、漆原議員に賄賂を送る(タイトル)
11.亮子、レストランの伝票を監視
12.亮子、惣菜屋を訪ねる
13.亮子、修正申告を言い渡す
14.亮子、マンションで高級車を目に止める
15.権藤、愛人から印鑑と通帳を受け取る
16.愛人、権藤を疑う
17.愛人、権藤を襲う
18.権藤、愛人をクビにする
19.亮子、パチンコ屋に1万円を仕込む
20.亮子、税務署に出社
21.亮子、部下を叱る
22.亮子、パチンコ屋の社長の脱税を疑う
23.亮子、昨日の売上を要求
24.亮子、カバンに目星をつける
25.亮子、仕込んだ1万円をみつける
26.亮子、5年分の脱税額を突きつける
27.パチンコ屋の社長、税理士をクビにする
28.亮子、立ち去る
29.亮子、ラブホテルで同じ高級車をみつける
30.亮子、ラブホテルの駐車場で車を数える(ダイちゃん)
31.亮子、ラブホテルの経営者・権藤をみつける
32.権藤、愛人(久美)でシーツの色を決める
33.愛人(久美)、ラブホテルの計算書を処分する
34.袴田、死去
35.権藤、5000万の宝くじを買取

36.税務署、ホテルは利益率が高い
37.亮子、シーツ屋を訪ねる
38.亮子、権藤と会う
39.亮子、豹の置物をみつける
40.亮子、権藤家の生年月日を質問
41.権藤、亮子を挑発
42.権藤、亮子にシーツを着せる
43.亮子、袴田不動産と蜷川の借入金について質問
44.権藤、ラブホテルの帳簿を隠すよう指示
45.権藤、亮子にラブホテルを案内
46.権藤、亮子を自宅に招待
47.亮子、内縁の妻のバッグを疑うも犬に邪魔される
48.亮子、スーパーマリオブラザーズで遊ぶ
49.亮子、権藤と店で遭遇
50.亮子と権藤、酒を飲む
51.権藤、亮子に財産の残し方を頼む。亮子、断る
52.亮子、蜷川組を訪ねる
53.蜷川、亮子を脅す
54.亮子、大谷銀行を訪ねる
55.亮子、大谷銀行の小切手を調べる
56.亮子、不作(マルサ)
57.蜷川、税務署を訪ねる
58.蜷川、税務署員を挑発
59.蜷川、署長に権藤から手を引くように要求
60.亮子、蜷川に宣戦布告
61.亮子、袴田不動産を訪ねる
62.袴田不動産、解体

 亮子、マルサに昇格

63.亮子、国税局を訪ねる
64.亮子、花村と会う
65.亮子と花村、二号(愛人)を訪ねる
66.花村、貸金庫の鍵を探す
67.裸になった愛人、泣き崩れる
68.亮子、鍵をみつける
69.マルサの仕事
70.マルサの仕事
71.元愛人、国税局に愛人(久美)の情報をタレ込む
72.亮子、ゴミ捨て場を監視
73.亮子、ゴミ処理場に到着
74.亮子、ラブホテルの計算書をみつける
75.課長、内偵を指示。亮子に忠告
76.亮子と花村、権藤邸でラブホテルの社長をみつける
77.ホテルの社長たち、権藤邸に訪ねる
78.大谷銀行、権藤邸を訪ねる
79.亮子と花村、家から出た権藤を追う
80.権藤、愛人(久美)のマンションへ向かう
81.亮子と花村、張込
82.大谷銀行、愛人(久美)のマンションを訪ねる
83.大谷銀行、貸金庫に到着
84.内縁の妻、貸金庫を出入り
85.金子、ラブホテルで張込
86.亮子と花村たち、課長に内偵を報告
87.花村、課長に助っ人を頼む
88.課長、ホテルの社長を装って権藤に電話をかける
89.亮子と花村、権藤邸に張込
90.亮子、内縁の妻を追う
91.査察、権藤邸の女中を待つ
92.花村、権藤邸に着手
93.査察、一斉調査に着手
94.ラブホテルの社長、帳簿を隠す
95.査察、ラブホテルに着手
96.金子、ラブホテルの社長と帳簿をみつける
97.亮子、権藤邸で権藤と再会
98.権藤、太郎を叱る
99.権藤、太郎に10万の使い道を質問
100.権藤、10万を奪う。太郎、家を出る。亮子、太郎を追う
101.亮子、太郎と話す
102.太郎、亮子と帰る
103.亮子、太郎を権藤に帰す
104.花村、権藤と話す。亮子、目星をつける
105.伊集院、愛人(久美)のマンションから印鑑をみつける
106.花村、権藤に「金の作り方」を質問
107.亮子、不作
108.権藤、花村に「金の作り方」を答える
109.亮子、7億をみつける
110.蜷川、漆原議員に助けを求める
  すばる銀行、弁明
  内縁の妻、美容院に到着

111.亮子と花村、美容院に到着
112.花村、内縁の妻に鍵を要求
113.内縁の妻、花村に鍵を渡すと約束
114.内縁の妻、花村に鍵を渡す
115.査察、すばる銀行から架空名義メモをみつける
116.花村、次長を問い詰める
117.花村、支店長から1億8000万の預金の認めさせる
118.課長、漆原議員の電話をとる

119.権藤、亮子と話す
120.亮子、太郎のことを話す
121.亮子、権藤を心配する
122.権藤、亮子を誘う。亮子、断る
123.権藤、亮子に残り3億の口座番号を教える
124.権藤、去る
125.亮子、権藤の姿をみつめる。街を眺める
126.エンドロール
127.エンドロール


2年、経ちましたね




まとめ

10分 その男、権藤英樹
20分 その女、板倉亮子
30分 亮子、権藤をみつける
45分 ラブホテルへようこそ
60分 亮子、宣戦布告
75分 内偵
90分 ガサ入れ
ラスト 権藤、亮子に口座番号を託す


次は、このまとめから邦画の教科書として『続・チャイナタウン』として2回分読んだ15分解説です
『チャイナタウン』を観てない方でも楽しめます

また『チャイナタウン』は当ブログで過去にミニッツライナーしてるので
お時間あればどうぞ
#02『チャイナタウン』ミニッツライナー(131分)
http://minuteliner.com/archives/64

それでは15分解説です





15分解説W
邦画の教科書   ×『続・チャイナタウン』
映画の半分で
権藤商事を調べるも不作に終わった次にはもうマルサに昇格
ラストで
不作に終わりそうになったガサ入れが、偶然秘密の扉を開けてしまうことで解決
これらのクライマックスで
主人公・亮子が葛藤・問題を解決する原因は
全て外力によって起こるもので主人公の行動によって得るものではありません
亮子は映画の最初と最後で「変化しない」人物です

では映画の最初と最後で「変化する」のは誰か?
その答えは『続・チャイナタウン』だ!!!と僕が豪語する理由であり
最初の10分にあります







10分まで
 その男、権藤英樹
最初の10分は「映画の紹介」です
主人公や登場人物が紹介され、ドラマ上の欲求や物語のキッカケが語られます

マルサの10分は悪役・権藤の10分です

①ガンで入院中の爺さん・袴田の名義で不動産会社をでっち上げ
先にマンションを抑えておき、後で菊地から正式に譲り受ける
②ヤクザとの関係がわかり
③最後に名前だけチョコチョコ出てきた漆原議員とのやりとりが
国会議事堂をバックに本当だとわかり
この映画のスケール・全貌が明らかになります

「ケッ、なにが税務署だ。来るなら来てみやがれ!」

ここまで、1億7000万儲けて。5000万を蜷川に預けた状態です

チャイナタウンとして読む
権藤は主人公・ギテスです

チャイナタウンでイヴリンを失ったあと
遂に、クロスと同じ悪の道に堕ちてしまった姿です
持ち前の口の上手さで町を支配し、裏で手引きし、国家権力すら彼の手中
足が不自由なのは失ったイヴリンでありギテスの枷であり
葛藤です




20分まで その女、板倉亮子
次の10分は亮子の10分です
税務調査官として働く主人公の紹介です

①「レストラン」の売上除外を見破り
②「総菜屋夫婦」に修正申告を言い渡す
「マルサ」の「女」という仕事・性格が実は薄情で冷淡なものであることが分かります

15分目に伏線が貼られます
亮子が権藤の車を気にかけると、マンションに居る権藤の家族感が明かされます
ラストを少しだけ暗示させて

さいごに亮子は税務署に出社
相手先の会社をナメてかかる部下を叱ります
主人公が本根で持っている態度がわかることで
彼女の2面性が段々見えてきます

チャイナタウンとして読む
亮子はギテスの意志を継ぐ者です

権藤の過去の葛藤を救済してくれる存在です
あの日、浮気調査していたように脱税の調査をしていて
散髪中の銀行屋と同じように自分の商売を批判されます
また、ギテスが最初にモーレイの手がかりを追ったのも「車」です




30分まで 亮子、権藤をみつける
30分目で「映画の目的」が説明されます
映画はどこへ向かうのか?主人公の動機は?
映画の舵が切られる第1のポイントです

最初の関門「パチンコ屋」で
脱税が仕組まれ暴かれる一連のプロセスを一度見せます

雨に降られ立ち寄ったラブホテルで
先ほどみつけた権藤の車に再会することで亮子はこのラブホテルに興味を持ち始めます

さいごに、経営者・権藤に辿り着きます
これが、彼女が映画で解決しなければならない映画の目的です
そんな亮子にも子供が居ることがわかり
主人公に共感できる面、優しさがようやく見えました

チャイナタウンとして読む
遂には不要に女に手を挙げるようになったギテス
権藤が愛人を持つのは失ったものに執着するからです

後に分かるようにギテスと同じものを失っています
そうそう、丁度30分目はギテスがモーレイとの面会を求めるシーンです





45分まで ラブホテルへようこそ
これから60分・映画の半分までは山場に向けて、お話が転がって膨らんで展開することで盛り上がりを見せます
その途中45分では「新しい要素」「全体の伏線」などのカードが配られる場面です

ここでの
新しい要素は、もちろん「亮子と権藤が対面」すること
全体の伏線は、「ラブホテル」についてです

愛人にラブホテルの計算書を処分させ
袴田が死ぬことで計画通り1億7000万の証拠を消し
5000万の宝くじ譲ってもらうことで蜷川から借入れた(ことにした)5000万を相殺
権藤の思惑通り順調にことが進みます

一方、税務署では利益が出やすく領収書をとらない「ホテル」の調査に目を向けます
「シーツ屋」の取引先から権藤をみつけることで
亮子の手腕が発揮されます

権藤商事にあった「豹」はローマ神話のなかで
香しいを息を放ち動物たち魅了して狩りをすることから恐れられていた獣です
唯一対抗できた動物が「ユニコーン」で角の解毒効果で屈してきたとされています
亮子と権藤の関係を象徴するのと同時に
二人の本質は同じところにあることを匂わせています
キリスト教では人々を伝道者の象徴として登場しますしね

そして、この小競合の結果は後一歩のとこで権藤の勝ちです

チャイナタウンとして読む
ギテスとギテスを継ぐ者が出会います
あの時、ギテスとイヴリンが警察署や店で会話をしたのもこの45分までのことです
ので、この時の権藤は亮子をイヴリンと重ねて見ています
この視点で観てみると権藤の行動・演技の意味が分かります
秘密を隠す立場は逆ですが、救済すべきは常に隠し事をしてる方です




60分まで 亮子、宣戦布告
映画の山場」です。名作の数々の「名シーン」はここで産まれます

亮子の息子「ダイちゃん」は映りませんが
権藤の息子「太郎」はこの映画で唯一登場する子供です
亮子はシングルマザー、権藤も妻を失っていることから
ラストに向けて
「父」「母」「子」のベストな関係をここで一度見せています
しかし、2人は相容れません

蜷川組、大谷銀行と調べて
亮子の調査は不作に終わってしまいます…が

ここで突然、蜷川組が税務署に来ることで
亮子 vs 権藤」の対立軸がハッキリします

チャイナタウンとして読む
ギテスが失ったもうひとつのもの・娘のキャサリンを
権藤は、息子だけはと大切に守っています
居ないイヴリンを保管するように3人が並びます
内縁の妻がバッグを持って逃げるのも
イヴリンが別れ際ギテスに何か言いかけるのも
映画の「答え」です




75分まで 内偵
ここからは映画の後半です
最後のの山場に向けて90分まで徐々にトーンが落ちていき
主人公の選択肢が狭まっていくことで「結局なにをするのか?」がハッキリし
主人公が自ら行動する「映画の溜め」をする場面です…が

意気込む亮子、最大の証拠である袴田不動産が取引していたマンションを調べますが取り壊されていた
先手を打たれ完全に後がなくなります

そこで、マルサに昇格。「マルサ編」が始まります
マルサで活躍した成果のように元愛人からのタレコミを獲得します
権藤の内偵に嗅ぎつけることで亮子のリベンジが始まります…

と書いて分かるようにこの15分で先に敗北再戦の機会を得るまで済ませています
の映画のテンポの良さはここにあります
本来30分の葛藤を半分におさえることで後半は鰻登りのように順調で
実は既に、権藤は撤退戦を強いられていたんです
この時点で負けは決まっていました

チャイナタウンとして読む
いよいよマルサ登場の後半は
チャイナタウンにとってはノア・クロス登場です
クロスの陰謀が徐々にわかっていくのがこの15分です




90分まで ガサ入れ
ここまで不利になって追い詰められた主人公はラストに向けてアクションを起こす
映画の舵が切られる第2のポイントです

マルサが権藤商事の全貌を確認し
ガサ入れが始まるまで
調べて、張込。だけの15分ですが
おもしろく撮ってるので一切苦にならず、気にもなりません
①花村が権藤
②亮子が内縁の妻
③金子がラブホテル
④伊集院が愛人(久美)のマンション
⑤そして、すばる銀行
これらの場面を同時に見せていきます


チャイナタウンとして読む
ノア・クロスの陰謀を暴く15分
ギテスがイヴリンの秘密を知るのが90分目ですが
マルサ達が権藤在宅の確証得ていないのと同じく
これは本当の事でもありませんでした…




ラスト 権藤、亮子に口座番号を託す
映画の最初に提示された「権藤の脱税」を暴き解決することで一件落着

権藤の「金の作り方」は山崎努の名演技ですね
最後に血文字で書く口座番号は無作為になるように撮影時の
元号・月・日・時で「6111262」と書かれているそうです

チャイナタウンとして読む
あそこの芝生で子供が遊んでるだろ
 ああいうの眺めてると
 俺は心が掻き毟られるような気がする
 幸せが手からすり抜けていく気がするんだ
イヴリンを失いとキャサリンを連れ去られたギテスの心情そのものです
権藤と亮子が眺めるこの町はラストの惨劇が起こったチャイナタウンです
彼の脱税もその為であり、亮子にイヴリンの影を見ていたからこそ寄り添ったわけです
思いを受け継いだ亮子はチャイナタウンを背負っていきます…

……ナイフで鼻切るシーンありましたよね…

15分解説おわり







あとがき

今回のミニッツライナーのサムネイルで使ったビジュアルは本来
続編である『マルサの女2』のビジュアルだったんですが
本作のヒットを受けて作られたファミコンゲーム『マルサの女』のパッケージに流用されていて
この公式の曖昧さ・緩さが僕が思う「昔」の空気・臭いなので使いました

『マルサの女』は山崎努の演技が唸る本当に完璧な映画ですが
続編『マルサの女2』は実質マルサたち
の本編です
ミニッツライナーを読んでこれから観る人
昔観て、続編は観たくない人も
是非毛嫌いせず観ていただきたい

僕が『続・チャイナタウン』だ、と言ってるのが
更に分かっていただけて面白がれるとおもいます

一生観ないのも手です

おしまい

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